インターネットを利用した動画によるタネ明かしのガイドライン

(公社)日本奇術協会・会員向
インターネットを利用した動画による
タネ明かしのガイドライン

<2020年度版>

2019年定時総会で報告された“ネット上での種明かしに対する抗議署名運動”を 受けて、今後、当協会員すべてが二度と過ちを侵さないために、また当協会の業界 関係各位に誠意ある対応を行うことを目的としたガイドラインを以下の通り定めます。

なお、ガイドランの策定においては、『「知財とマジック」ワーキンググループ (IP-Magic WG) “志村浩氏/中村安夫氏/松下昂永氏/松山光伸氏 ※アイウエオ 順” 』に長期間にわたっての意見交換や本文作成までのお力添えを頂戴しました。

この場をお借りしてご紹介するとともに心より御礼を申し上げます。

《要旨》

インターネット上での種明かしは原則禁止とする<ガイドライン>

ただし、何らかの事情により当該行為を行わなければならない場合は、 別途定める 「当協会審査委員会による事前審議」 または 「理事会 による事前審議」 を受けるものとする。
「事前審議」は別途記載した 《本文》 により遂行されるものとする。

《付随:倫理について》

インターネット上での種明かしに直接関与しない場合においても 当該行為常習者との接触/交流は原則自粛すること

ただし、何らかの事情により人間関係を重視する場合は、 別途定める 「当協会審査委員会による事前審議」 または 「理事会 による事前審議」 を受けるものとする。

《審査委員会の設置》

委員長:長谷和幸 委員:藤本明義、TSUKASA


《本文》

(目的)
第1条 本ガイドラインは、公益社団法人日本奇術協会(以下「協会」という。)の会員 (以下「協会員」という。)がインターネットを利用した動画によって奇術のタネ明かしを する場合について、その適正を確保し、奇術文化の発展に寄与することを目的とす る。

(定義)
第2条 本ガイドラインにおいて、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定め るところによる。
一 奇術:奇術、マジック、手品、メンタリズム、その他の呼称を問わず、物理法則、化 学変化、機械的構造、錯覚、心理的誘導その他の合理的な方法によって、観客の知 覚を誤らせ、観客をして合理的ではない現象が生じていると認識させる行為であって、 観客を楽しませることを目的とするものをいう。
二 演者:奇術を演じ、又は演じようとする、協会員をいう。
三 観客:演者が奇術を演じる相手をいう。
四 奇術のタネ:奇術に用いられる物理法則、化学変化、機械的構造、錯覚、心理的 誘導その他の合理的な方法であって、演者において、観客がその存在又は内容を認 識していないことを想定するものをいう。
五 タネ明かし: 特定の奇術に係る奇術のタネを、当該奇術との関連において、通常 人が理解できる程度に具体性をもって開示すること(ただし、特定の奇術との関連性 を明示していない場合であって、特定の奇術との関連性を容易に推知することができ る場合を含む。)をいう。
六 対象奇術: タネ明かしの対象となる特定の奇術をいう。
七 創案者:具体的な発案又は企画によって奇術のタネを創案した者をいう。
八 役員:協会員であって、協会の理事会メンバーである者をいう。
九 受講者:タネ明かし動画を閲覧する者をいう。

(インターネットを利用した動画によるタネ明かしの制限)
第3条 協会員は、奇術文化の発展に寄与する場合に限り、インターネットを利用した 動画によって奇術のタネ明かしを行うことができる。
2 前項にいう奇術文化の発展に寄与するか否かの判断においては、次の各号の事 情を総合的に考慮するものとする。
(1) 創案者の経済的利益及び人格的利益を不当に侵害しないこと。


(2) 他の演者の経済的利益及び人格的利益を不当に侵害しないこと。
(3) 対象奇術に係る奇術のタネを認識していない者が、その意に反して、観客とし て対象奇術における合理的ではない現象を認識する機会を損なうものではないこと。 (4) その他奇術文化の発展への寄与にかかわること。

(無償での奇術のタネ明かし)
第4条 理事会は、協会員が、不特定又は多数の受講者にタネ明かしを行う場合に おいて受講者から対価を得ず、又は不当に安価な対価を得てインターネットを利用し た動画による奇術のタネ明かしを行ったとき、当該協会員に対し、当該タネ明かしが 奇術文化の発展に寄与するものであることを具体的に説明する書面(以下「説明書 面」という。)を提出するよう求めるものとする。
2 前項の求めを受けた協会員は、2か月以内に説明書面を提出しなければならな い。
3 第1項の求めを受けた協会員は、説明書面において、次に掲げる項目等について 説明するよう努める。
(1) 前条第2項第1号関係

ア 創案者の氏名
イ 対象奇術に係る奇術のタネが公表されてから相当期間が経過していること ウ 創案者によるタネ明かしへの同意
エ 過去における対象奇術に係るタネ明かしの有無及び回数

(2) 前条第2項第2号関係 前項イ及びエの事項

(3) 前条第2項第3号関係 受講者に、奇術に係る技能を習得するために継続的な学習に励む意思のない者

が多数は含まれていないこと。 (4) 前条第2項第4号関係

ア タネ明かしによって奇術の愛好者が増加すること。
イ 奇術のタネを公表するに際して、その説明に必要な範囲で、基礎となった他の

奇術のタネについてタネ明かしをするものであること。

(有償での奇術のタネ明かし)
第5条 理事会は、協会員が不特定又は多数の受講者にタネ明かしを行う場合にお いて、受講者から相当の対価を得てインターネットを利用した動画による奇術のタネ 明かしを行うとき、当該タネ明かしが奇術文化の発展に寄与するものではないと認め る理由がある場合に限って、その理由を示して、当該協会員に対し、説明書面を提出 するよう求めるものとする。


2 前条第2項及び第3項は前項に準用する。

(説明の求め)
第6条 理事会は、説明書面を受領した後、当該説明書面によってもなおタネ明かし が奇術文化の発展に寄与するものであると認めることができない場合には、タネ明か しを行った協会員に対して、理事会に出席し、当該タネ明かしが奇術文化の発展に寄 与するものであることを説明するよう求めなければならない。
2 前項の求めを受けた協会員は、理事会において、タネ明かしが奇術文化の発展 に寄与するものであることを説明しなければならない。

(理事会による意見の公表)
第7条 理事会は、第4条又は前条における説明書面の提出を求めた後、タネ明かし が奇術文化の発展に寄与するものであるか否かを検討するための資料を十分に得 たとき又は前条第2項の説明を受けたときは、当該タネ明かしが奇術文化の発展に 寄与するものであるか否かについて意見を公表しなければならない。
2 理事会は、前項の意見の公表に際して、説明書面及び前条第2項の内容をも公 表するものとする。

(法令の遵守)
第8条 協会員は、公衆送信を利用した動画によるタネ明かしを行う場合、著作権法、 特許法、不正競争防止法その他の関係法令の定めを遵守しなければならない。

附則
第1条
本ガイドラインは令和2年2月1日から施行する。
第2条 本ガイドラインは、施行から1年後にその内容を見直すものとする。

以上